凡例(WEB版)

編集方針

  1. 本事典は,ウェブサイト「建築文庫」内にWEB版「建築大辞典」を開設するにあたり,1996年に出版された『建築大辞典 第2版』(2009年5月10日発行 第11刷)を原本としてデータ化し,原本に忠実に,全36,575語を掲載した。
  2. WEB版の特性をいかし,見出し語のほか,外国語や本文内の検索を可能とした。
  3. 各語彙の解説には,原本通り3,000図を超える豊富な図版・写真類を掲載したほか,指示語,関連語,反義語へのリンクを表示した。
  4. 本事典の初版が出版されたのは1974年,その後の著しい科学技術の進歩・発展,また建築領域の深化・拡大を踏まえ,第一線の研究者,技術者による新しい編者,執筆陣によって大規模な改訂を施したのが1996年出版の第2版である。また,その後も,変化・進化を続けている建築領域においては,今再びの改訂を望まれる向きも少なくないと考えているが,古語の収録と同様,時代性をも記録する建築大辞典の志に則り,1996年現在の内容のままでWEB版を作成したものである。従って,法律,規則,数量単位ほか,現行にあわないものもあるが,一切修正を加えておらず,その時代性と認識されたい。
  5. ただし,書籍版第2版にて巻末におかれていたアルファベット順による「英和対照語彙集(他国語も含む)」および「難読語集」は,大いに本辞典利用上の便宜を高めてくれていたが,WEB版においては,それらの役目を語彙検索が担え,より便宜を図ることができるため,これらの掲載は割愛した。

なお,1996年出版の書籍第2版の編集方針は,下記の通りである。

  1. 本辞典は,カタカナ,ひらがな見出し50音引きによる建築用語の集大成を意図して編集されたもので,総収録語彙は約34,500語に及んでいる。
  2. 元来,建築用語とは,建築学を構成する学術用語をはじめ,建築を造る用語,建築を使う用語,そして建築を記録する用語などを包括したものをいうが,本辞典においては,上記の狭義の建築用語に加えて,建築に関連のある用語,建築と他分野とを結ぶ用語―すなわち建築が接点を持つ近隣分野である都市工学,景観工学,造園,インテリア,デザイン,工芸,人間工学,防災工学,産業ロボット,数学,建築経済などの用語も積極的に収録してある。さらに,在来の辞典に共通して欠落している人名,文献名,建物名,都市名,団体名,会議名も収録した。特に歴史関係においては,建築儀礼,和船などの用語および華道,茶道など我が国の建築空間の創造と伝統に深くかかわっている作法や室礼に関する用語,各地に残る民家・民俗に関する用語なども数多く記録した。これは,建築分野において,将来当然起こるべき学問領域の拡大ないしは他との融合の予測と,現時点で記録しておかないと消滅するおそれのある古語の収録とを意図したものである。
  3. 本辞典は,その性格を各分野の専門家が各自の専門分野について使用するためのものではなくして,関連ある周辺分野の用語を抽出し,それを理解するためのものとすることに徹した。言い換えれば,建築諸分野にある共通の情報をできるだけ広く,正確に収めることである。したがって,この方式に則ると,ややもすれば語彙が無限に増加する危険性があるので,本辞典では,極端な専門用語ならびに一般的な国語辞典に収録されていて,しかも格別の意味を持たない間接的な用語および解説は省いてある。
  4. 各語に付された解説は,単なる言葉の定義を超え,意識的に,やや事典に近い記述方式を採っている。加えて必要な語には,でき得る限り図版を付し,視覚的な理解を併せて重視するとともに,語彙解説中に収録し得ない大きさを持つ総合図表については付図・付表として巻末にこれをまとめてある。
  5. 各語彙には,原語のあるものはもちろん,相当語として的確とされる表現を英語中心で付し,英語以外の語には国籍を略記してその国語を付けてある。そして巻末にはアルファベット順による英和対照語彙集(他国語も含む)としてまとめてある。同じく巻末の難読語集とともに本辞典利用上の便宜を高めてくれると信じている。

語彙検索

語彙検索の方法は,下記の4種とした。

  1. 見出し語を対象とした,部分一致,前方一致,後方一致の3種の検索方法。
  2. 全文を対象とした,完全一致の検索方法。

語彙表示

各語彙ページには,「見出し部」と「解説部」を設けた。

  1. 見出し部では,見出し語,漢字表記,外国語表記あるいは発音を表示した。
  2. 解説部では,解説文とともに,リンク先として指示語,関連語,反義語の欄を設けた。また,凡例および付図・付表へのリンクを設けた。

記述順序

記述順序の原則を下記の4種とした。

  1. 日本語(沖縄および方言を含む)の場合
    見出し語(ひらがな) ― 漢字 ― 外国語 ― 解説
    (例) 
    はし 橋 bridge 往来のために川や池などの両岸や… …

    見出し語(ひらがな) ― 解説
    (例) 
    はあふうやあ 沖縄地方の民家で… …
    どじ ① 長野県西筑摩郡の民家で… …
  2. 中国語・朝鮮語など,従来漢字または当て字のある場合
    見出し語(ひらがな) ― 漢字 ― 発音(カタカナ) ― 解説
    (例) 
    てんだん 天壇 ティエンタァン 中国で,天子が天を祀る儀式のための… …
    りゅうしばん 竜枝板 ヨンキーパン 朝鮮建築で,一柱門の門柱側面に… …
  3. 外国語・外来語(当て字のあるものを含む)の場合
    見出し語(カタカナ) ― 外国語 ― 解説
    (例) 
    イオン ion 電荷を帯びた原子または原子団。ファラデーが… …
  4. アイヌ語の場合
    見出し語(カタカナ) ― 解説
    (例) 
    チセマカニ アイヌの住居すなわちチセにおいて母屋桁のこと。… …

見出し語

  1. 日本語はひらがなで,外国語・外来語はカタカナで示し,太字で表記した。
  2. 外国人名は見出し語としてファミリーネームを掲げ,後に,できる限りフルネームをつけることとした。例外として個人でない場合もある。
    (例) 
    ガルニエ,トニー Tony Garnier 〔1869~1948〕フランスの建築家… …
    アーザムきょうだい アーザム兄弟  Asam brothers ドイツバロックの… …
  3. 外国語・外来語の見出し語が略称の場合は,カタカナの次にローマ字による略名を置き,解説において正式名を示すことに努めた。
    (例) 
    アールアイシーエス RICS The Royal Institution of Chartered
    Surveyorsの略称.イギリスの王立公認調査士学会のこと.… …
  4. 一つの見出し語に幾通りもの漢字がある場合は,その頻度の高いものから順次列記した。
    (例) 
    ひさし 庇/廂
  5. 中国語・朝鮮語は日本で一般に使用されている漢字を,他の外来語でも慣用で漢字が当てられているときは,その漢字を掲げたものもある。
    (例) 
    イポ 耳包  カリ 加里  さらさ 更紗

見出し語の配列

  1. 50音順。
  2. カタカナ,ひらがなの順。
  3. 清音 ― 濁音 ― 半濁音の順。拗音・促音もそれぞれの清音と見なし,見出し語の簡素化を図った。
    (例) 
    はらいた 腹板 ― ばらいた ばら板 ― バライト
    じやま 地山 ― シャマイエフ ― しゃまく 紗幕
  4. 同じ見出語が複数ある場合,漢字の画数が少ない順に配列した。
    (例) 
    し 司/使 ― し 市 ― し 枝

外国語

  1. 外国語・外来語の原語,翻訳語,定訳のある英語,相当する英語は,原則として解説のある語に付した。
    (例) 
    いっぽんクレーン 一本クレーン → ジンポールデリック gin pole derrick
  2. 見出し語に付する外国語は英語とした。特に英語と米語に著しく違いのあるものには区別を付けた。ただし,語尾の違いには触れなかった。
    (例) 
    こうそくどうろ 高速道路  〔英〕motorway〔米〕expressway,freeway
  3. 英語以外の外国語は国籍名を入れた。
    (例) 
    ファサード 〔仏〕façade
  4. ギリシア語,アラビア語,トルコ語,サンスクリット語などについてはローマ字に置き換えた。
    (例) 
    ストゥーパ 〔梵〕stūpa
  5. 植物名でラテン学名のあるものには〔拉〕の表記を付け,特にイタリック書体とした。
    (例) 
    ばらるい 薔薇類 〔拉Rosa sp.

解説

  1. 2以上の意味を持つ語については,① … ….② … … と分けて解説した。
  2. 同義異語あるいは同語異音は,一般に使われている語に解説を置き,他は見出し語のみとして解説のある語に記号(→)を付した。これを「指示語」としてリンク先を指示語欄に示した。
  3. 文献には発行年と出典,建物には竣工年,JISやJASには番号,人名には生没年を付けた。
    ※第2版刊行時(1966年)に得られた情報に基づく。
  4. 関連語欄には,見出し語に関連する語のリンクを表示した。
  5. 反義語欄には,見出し語に反義をもつ語のリンクを表示した。
  6. 「凡例」は凡例へのリンクを表示した。
  7. 「付図・付表」は付図・付表へのリンクを表示した。参照先は解説中に記載した。

記号

〔 〕
  1. 外国語の国籍名
    〔英〕イギリス〔米〕アメリカ〔拉〕ラテン〔露〕ロシア
    〔仏〕フランス〔独〕ドイツ〔亜〕アラビア〔波〕ポーランド
    〔西〕スペイン〔希〕ギリシア〔蘭〕オランダ〔葡〕ポルトガル
    〔土〕トルコ〔梵〕サンスクリット
  2. 人名における生没年
    (例) 
    伊東忠太 〔1867~1954〕
  1. 指示語の解説を見よ
    (例) 
    すあな 素穴 → にげあな
  2. 指示語の図を見よ (例) 
    りきゅうきど 利休木戸… …. →(図)さるど(猿戸)③
詳しく理解するための関連語を見よ
(例) 
アーケード⇒がんぎ③
反義語または一対の意味を持つ語
(例) 
いりすみ 入隅 ①二つの面が… …. ⇔出隅
『 』 書名,雑誌名,論文名
(例) 
『匠明』
『Modern Architecture (1929)』
「 」
  1. 解説中の引用文,宣言など
    (例) 
    B. タウトの「色彩宣言」… …
  2. 見出し語の略称・別称および使用例
    (例) 
    略して「無双」ともいう。
    … …「A材をB材の面中にする」という。
( )
  1. 解説の中の難読語の振り仮名
    (例)
    豕(いのこ)
  2. 解説の中の語の説明および補足事項
    (例)
    古代エジプト(新王国以後)
    1830(天保元)年
    … …「A材をB材の面中にする」という。
  3. JISやJASS番号,建物竣工年,事件年代,書籍刊行年など
    (例)
    (JIS A 1101)
    二条城(1625)
    『パターン ランゲージ』(1979)

用字・用語について

『常用漢字表』,『現代仮名遣い』,『外来語の表記』の趣旨に準拠することを建前とするが,建築のもつ歴史的,国際的な広がりを持つ多岐多様な文化性にかんがみ,表現の適切さに重点をおき,許容範囲を限定するなどの措置はとらない。
本WEB版においては,原本の表記を忠実に表示することに努めた。

  1. 常用漢字表外漢字の使用について
    1. 建築に関する専門用語および他分野を含む学術用語はこれを尊重し,積極的に使用した。
      (例) 
      梁 桁 杭 柵 庇 瓦 樋 釘 渠 砥 勾 堆 蔽 脆 靱 歪 汀 塡 湧 礫 笠 雁 崖 吊 閾 竪 廟 框 塵 楔 肘 鉋 鋸 鋏 鑿 鉤 槌 桶 摺 枘 茅 枡 襖 汲 釜 屑 爪 斑 煉瓦 柿葺 螺旋 勾配 斗栱 瑕疵 濾→沪 軀→躯 檜→桧 など
    2. 固有名詞や歴史的記述,俗言,職能方言の類,また慣用語や当て字などには振り仮名を付して用いることとした。
      (例) 
      生子板(なまこいた),斫(はつ)る,决(しやく)り,迫(せ)り
      ※( )内の拗促音は小書きにしない。
    3. 漢字の字体は常用漢字表に同義の字のあるものは,それを使用することを本則とし,混乱を避けた。
      (例) 
      天龍寺→天竜寺 峯→峰 國→ 国 繪→絵 燈→灯 澤→沢 榮→栄 衞→衛 嶽→岳 罐→缶 廣→広 溪→渓 螢→蛍 藝→芸 壽→寿 焔→炎 櫻→桜 澁→渋 眞→真 圖→図 雙→双 藏→蔵 瀧→滝 靈→霊 戲→戯 萬→万 禮→礼 など
    4. 全体を通じ,難読語には可能な限り振り仮名を付することとした。
      (例) 
      鎬(しのぎ)目地 剪(せん)断
      ※( )内の拗促音は小書きにしない。
  2. 送り仮名について
    1. 歴史的記述や専門用語は,従来,仮名を送らないものが多く,簡潔で直覚できる便があった。しかし,建築への関心の高まりや生活とのつながりを考慮して,より読みやすく,また古書に接するときの資となるよう,現代の一般表記の本則になるべく近づけるようにした。
      (例) 
      明り障子 流れ造り 付け書院 掘立て柱 向う切り 間仕切り壁 吊り屋根 妻飾り 腹起し 塗り仕上げ 取付け道路 引張り強度
    2. 活用語については,難読や誤読のおそれのないことに留意して,特に複合して名詞化されたものや慣用されているものには一部省いたものもある。
      (例) 
      洗出し 折曲げ 造付け 役割 受付 控室

外来語について

外来語は,原音の意識の残るものについての認識が人により異なるので,国語審議会の『外来語の表記』,『学術用語集』,JIS,法規などを参考にして独自に判断した。

数量単位について

従来の尺貫法,ヤード・ポンド法,メートル法のほか,各地各分野で歴史的にも現代でも用いられているものは生かした。また移行中であるSI単位もできる限り関連づけて採用した。なお付図・付表にそれぞれの単位の換算表を付して,大方の利便を図った。
※第2版刊行時(1966年)に得られた情報に基づく。

その他

アルファベットやギリシア文字の読みは次のように定め,利用上の統一を図った。

  1. アルファベツト
    AエーBビーCシー
    DディーEイーFエフ
    GジーHエッチIアイ
    JジェーKケーLエル
    MエムNエヌOオー
    PピーQキューRアール
    SエスTティーUユー
    VヴィーWダブリューXエックス
    YワイZゼット
  2. ギリシア文字
    Α αアルファΒβベータΓ γガンマ
    Δ δデルタΕ εイプシロンΖ ζゼータ
    Η ηイ(エ)ータΘ θシータΙιイオタ
    Κ κカッパΛ λラムダΜμミュー
    Ν νニューΞξクサイ(クシ)Ο οオミクロン
    Π πパイΡρローΣ σシグマ
    Τ τタウΥ υウプシロン(ユ)Φφファイ(フィー)
    ΧχカイΨψプサイ(プシー)Ω ωオメガ